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[レポート]Mi-Mi-Bi、初めての海外公演へ

2026.07.05

レポート:文(NPO法人DANCE BOX)
聞き取り:岩本順平

 
 


 
 
2026年7月4日、5日。韓国・ソウルで、ダンスカンパニーMi-Mi-Biは初めての海外公演をおこなった。
 
▶︎公演詳細はこちらから

 
Mi-Mi-Biは、NPO法人DANCE BOXが文化庁委託事業「障害者等による文化芸術活動推進事業」として実施しているプロジェクト「こんにちは、共生社会」から生まれたダンスカンパニー。障害のある人、ない人、異なる身体性や感覚をもつ人たちが、ともに作品をつくり、上演する場を重ねてきた。
 
今回の韓国公演は、ソウルを拠点に活動するCane&Movement / TRUST Dance Theatreとの共同制作として実施されたもの。2025年12月に神戸・新長田のArtTheater dB KOBEで上演した作品を、韓国で再演する機会となった。日本からはMi-Mi-Biのパフォーマーに加え、通訳、介助者、スタッフ、家族が同行し、移動から滞在、リハーサル、本番までをともに過ごしたそう。その滞在中のこと、公演のこと、作品制作に関することなど、帰国した日の夜、ディレクターの文(あや)に話を聞きました。
 
 

神戸空港にて 
 
 
DANCE BOXと韓国側の関係は、今回突然はじまったものではない。きっかけは2018年、森田かずよが韓国でTRUST Dance Theatreと作品をつくったことだった。その作品を日本でも上演したいという話があり、2019年、「こんにちは、共生社会」の初年度事業として神戸での上演につながっていく。
 
その後、2025年12月には韓国側のメンバーが神戸に来て共同制作をおこない、今回、Mi-Mi-Biが韓国へ向かうことになった。行き来の回数だけを見ると、決して多いわけではない。それでも、文はこの関係が続いてきた理由を、こう話していた。
 
「なんで続くかっていうと、カンパニーとカンパニーだからだと思うんです。事業の枠だけではなくて、カンパニー同士として関係が続いてきたことが大きい」
 
一回の招聘や交流事業ではなく、作品をつくる集団同士として出会ってきたこと。誰がどのような身体で、どのように踊り、どのような場面で支えが必要になるのか。作品の中で何を大事にし、現場でどのような判断をするのか。そうしたことを、互いに少しずつ知ってきた時間がある。今回の韓国公演は、その関係をもう一度、別の場所で確かめる機会でもあった。
 
 

2025年12月の神戸公演 第三部『Across the Movement』より
(会場:ArtTheater dB KOBE/撮影:Junpei Iwamoto)

 
 
現場では、韓国側のダンサーや家族、スタッフとの関係も支えになっていた。2019年から顔を合わせてきた人たちもおり、今回が三度目の再会になる人もいたという。会うたびに少しずつ、お互いの状況がわかっていく。必要な場面で声をかける。手を貸す。子どものことを気にかける。

文は、韓国側のメンバーや家族について「出会いを重ねているから、思いも伝わる」と話していた。出演者だけでなく、家族や同行者も含めて、現場全体が少しずつチームのようになっていく。その実感があったのだと思う。

今回の韓国公演では、通訳や介助の体制も大きな要素だった。介助はダンスボックスがある新長田の<はっぴーの家ろっけん>の協力でヘルパーを同行してもらい、事前の下調べや持ち物の準備も十全にしていただいた。車椅子での移動、空港での手続き、宿泊先での生活、リハーサル中のコミュニケーション。海外で公演をおこなうには、舞台上のことだけではなく、その前後にある時間をどう成立させるかが問われる。
 
 

はっぴーの家ろっけんにて
渡航前に韓国公演に向けて、福角幸子さんの壮行会がおこなわれました!

 
 
たとえば、三田宏美の存在がある。三田はMi-Mi-Biのメンバーではあるが、今回は手話通訳として同行の予定が、急遽出演することになった。急遽の出演は心の準備も環境を整えることも必要だ。通訳であり出演者、時に介助。稽古場や生活面ではコミュニケーションを支え、本番では舞台に立つ。その立場は一つの言葉では整理しきれない。

Mi-Mi-Biの現場では、こうした役割の重なりがしばしば起こる。もちろん、それぞれに担っている専門性や役割がある。そのうえで、予想していなかった出来事が起こる。誰かがトイレに行く。子どもと少し外に出る。リハーサルが長引く。通訳が必要な場面と、身体的なサポートが必要な場面が同時に起こることもある。

「仕事として役割を与えられたから、その役割だけをやります、ということではない。どうやったらその環境や状況が成立するのかを考えると、結局、人が人と一緒に何かをするという、もっとシンプルなところに戻っていく」

文のこの言葉は、今回の現場をよく表している。固定された役割をなくすのではなく、それぞれの役割を持った人たちが、その場の状況に合わせて少しずつ位置を変えていく。誰が今動けるのか。誰が本人のことをよく知っていて、誰がその場の言葉をつなげられるのか。今回の韓国公演では、その判断が何度も必要になった。
 
 


いろんな場面で役割を越えて、関わりあいながら進んでいく
 
 
移動にも、細かな確認が続いた。飛行機に乗る際には、車椅子から機内用の細い車椅子に乗り換え、座席へ移る。電動車椅子の場合は、バッテリーを外して機内に持ち込む必要がある。車椅子本体を預けるための確認や梱包にも時間がかかる。空港には余裕を持って到着していたものの、実際には手続きだけでかなりの時間を使ったという。

韓国の地下鉄では、ホームと車両の隙間やドアが閉まるタイミングに気をつかった。ある駅では、車椅子の前輪がホームと車両の間に落ち、周囲の人が手を貸してくれたこともあった。大きな事故にはならなかったが、文たちはかなり焦ったという。次からは乗るドアを分けるのか、乗ったあとすぐ横に移動するのか、その場で話しながら対応を変えていった。

韓国の交通機関が特別に冷たいという話ではない。ただ、日本での移動と同じ感覚ではうまくいかない場面があった。ドアは時間になると閉まる。人の流れも速い。駅員のサポートがある前提で動ける場所ばかりではない。だからこそ、同行者の人数、立つ位置、乗る順番、声をかけるタイミングが大事になる。
 
 

車椅子をしっかり梱包


専用の車椅子に乗り換えて、移動をサポートしてもらう
 
 
一方で、韓国で出会った人たちの距離の近さも印象に残っているという。初日に入った店には階段があった。車椅子では入りにくい店だったが、店の人や周囲の人たちが手を貸してくれ、みんなで車椅子を運んで食事をした。滞在の後半にもう一度その店を訪れたときには、とても喜んで迎えてくれたそうだ。

「最初からどこでも入りやすいわけではないけれど、一度関係ができると、すごく目をかけてくれる感じがあった」

文はそう振り返る。階段もあるし、設備が整っているとは限らない。ただ、一度関係ができると、店の人がよく見てくれる。こちらの状況を理解しようとしてくれる。制度として整っているかどうかとは別に、人との距離が一気に近くなる瞬間があった。

もちろん、それだけで移動や滞在の困難が解決するわけではない。バリアフリーの環境があること、介助や通訳の体制があることは前提として必要になる。そのうえで、実際の現場では、設備だけでは足りない場面も出てくる。階段のある店に入るのか、別の店を探すのか。地下鉄に乗るのか、タクシーを使うのか。時間を優先するのか、負担の少なさを優先するのか。

そうした判断は、事前の計画だけでは決めきれない。本人の状態、同行者の疲れ、現地の人の反応、その日のスケジュール。それらを見ながら、その場で選んでいく。海外で公演をするということは、作品を運ぶことだけではない。人が移動し、滞在し、生活しながら、本番に向かっていくことでもあった。
 
 

Yeongcheonトラディショナル・マーケット
 
 
創作面でも、韓国での時間は刺激になった。文が特に話していたのは、演出を担ったキム・ヒョンヒ氏のこと。キムは、これまで韓国の舞踊の前線で活動してきた振付家であり、現在は障害のある人やその家族との創作、表現教育にも力を入れている。
文には、キム・ヒョンヒ氏が一人ひとりの身体から「今挑戦でき得ること」を見つけようとしているように見えたという。

「こうでなければならない、というより、その人が今何に挑戦できるのかを見ている感じがした」

あらかじめ決まった形に身体を合わせるのではなく、その人が持っている動きや反応を見ていく。手を叩く。止まる。逆立ちをする。視線を向ける。誰かの近くに立つ。そうした小さな動きや状態の中から、作品に入っていく入口を探していた。

ただ自由に動けばいい、ということでもない。何かを引き出すには、きっかけが必要になる。動きのルールがあり、場の設定があり、誰かとの距離がある。その条件の中で、その人の身体がどう反応するのかを見る。できることをそのまま置くのではなく、作品として成立するところまで持っていく。そのための時間が、稽古場にはあった。

これは、Mi-Mi-Biがこれまで大事にしてきたこととも近い。動いていればダンスになるわけではない。既存のダンスの形に身体を合わせることだけがダンスでもない。その人にしかできない動きがある。そこにどう向き合い、どう作品にしていくのか。文たちは、Mi-Mi-Biの創作でも、そのことを繰り返し考えてきた。

Mi-Mi-Biは、当事者も主体的に動くカンパニーをつくりたいという思いから始まっている。個人の表現として終わらせるのではなく、カンパニーとして活動を続けること。そのためには、作品づくりだけでなく、稽古場、移動、介助、通訳、広報、劇場との関係、経済的な基盤まで含めて考えなければならない。
 
 

キム・ヒョンヒ氏とのクリエイション


出演者・介助者・制作者で役割を越えてさまざまな話に花咲かせる
日夜とわず濃密な時間を過ごしました

 
 
文は、DANCE BOXという劇場があることが、Mi-Mi-Biの活動を支えていると話していた。

「カンパニーだけだったら、経済基盤も人の体制もどうしてもぐらつく。DANCE BOXがあることで、二重構造になっているのがいい気がする」

完全に独立したカンパニーとして成立することだけを急ぐのではなく、劇場とカンパニーが重なりながら続いていく形。そのあり方が、今のMi-Mi-Biには合っているのかもしれない。

今回の韓国公演は、Mi-Mi-Biにとって初めての海外公演だった。ただ、その背景には、2018年から続いてきた韓国側との関係がある。2019年の神戸公演があり、2025年12月の共同制作があり、その続きとして今回の上演があった。

作品を上演するために、韓国へ行く。
移動し、滞在し、食事をする。
稽古をし、通訳をし、介助をし、本番に立つ。

その一つひとつが、公演の一部だった。大きな成果としてまとめるよりも、今回見えてきたのは、次に向けて持ち帰る具体的な経験だった。移動の難しさ。体制づくりの必要性。現地の人との関係。カンパニー同士で続けてきた時間の強さ。

初めての海外公演は、Mi-Mi-Biがこれからも活動を続けていくための、大事な経験になった。
 
 

韓国・ソウル公演『Between Words』集合写真
 

キム・ウォニョンさんと
2026年11月 Mi-Mi-Biとウォニョンさんは神戸ArtTheater dB KOBEにてダブルビル公演を予定しています!

 

全員で無事帰国!

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こんにちは、共生社会とは

障がいの有無、経済環境や家庭環境、国籍、性別など、一人一人の差異を優劣という物差しではなく独自性ととらえ、幾重にも循環していく関係性を生み出すことを目的としたプロジェクトです。2019年に神戸市長田区で劇場を運営するNPO法人DANCE BOXにより始動しました。舞台芸術を軸に、誰もが豊かに暮らし、芸術文化を楽しみ、表現に向かい合うことのできる社会をめざす、多角的な芸術文化創造活動です。

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