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レポート|身体で聴いてみる・交換してみる

2019.09.28

2019年9月28日(土)

聴覚障がいのある方を対象にしたダンスワークショップはどのように成立するだろう。そのことを考え、幾度もの勉強会を重ねてきたメンバーがドキドキしながらも、楽しみに待ちわびた「<音楽とダンス>身体で聴いてみる・交換してみる」が開催された。

ワークショップは、聴覚障がいのある人だけでなく、誰でも対象として参加者を募集することを事前に決定。そして、最も大きな決断にしてチャレンジとなったのは、開場・受付時からまったく言葉を発さないサイレント状態を貫いたこと。およそ2時間におよぶワークショップ中も一切発話せず、手話もなし。身振り手振りを中心に、最低限の指示内容は、ホワイトボードやパソコンプロジェクタ投影を使って行われた。

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しゃべらないからといって、決して完全なる静寂空間ではない。参加者の動きから生まれるさまざまな音、床を踏み鳴らす音、息づかい…そして、驚きや笑い声といった感情や表情は、むしろ自然と表に表されているように感じられた。

呼吸に気持ちを向けるウォーミングアップに始まって、握手の手前、触れるペアワークショップで1時間。軽く休憩を入れた後、五感を開くようなテキストを共有した上で、いちど劇場の外へ。そこで感じられたものを墨と筆で自由な書として表現して、それを身体で描いてみたり、その動きをペアで見あって交換することなども試みられた。

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ワークショップに参加していた首藤美幸さんが、受講しながら目にした動き、様子を即興的にその場で描いてくれた絵を下に紹介。個々にワークショップの開始を待つ様子から、ペアワーク、書を使ったワークまで、スピーディーな線に現場の空気感がにじむ。

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イラスト:首藤美幸

ワークショップを終えた後は、車座になってフィードバックの時間。サイレントな状態が長く続いたため、「今からは声を出してOK」というアナウンスもためらわれるほど。声を出さないことが当り前という場が、短いながらも実現していた。

スタートして2時間以上経ったこの場ではじめて、さまざまな状況の聴覚障がいの人が参加していたことがわかりはじめた。

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参加者やナビゲーターから出た感想を一部こちらに記錄する。

「言葉を使わなくても、互いの手のひらを上下に合わせるだけでもたくさんのことが伝わるんだなって。そのことに気づかされました」

「どなたが聴覚障がいを持っている人なのか、持っていない人なのか気になっていたけど全然わからなくて。途中からはもう、そんなことはどうでもいいやって」

「離れているのに伝わっている、こちらに届いてくるということを実感して泣きそうになりました」

「呼吸を感じることからいろんな発見につながっているんだと知りました。そのことで身体が軽くなったり、重く沈みこんだり、しなやかに身体を動かすこともできるんだなって」

「サイレントな空間の、この居心地のよさってなんだろうって考えてたんですけど、静かだということではなくて、全員が同じ速度でしゃべっていたのだと気づきました。聴こえる聴こえないという尺度は関係ない、みんな一緒だという空間を共有できたことがとてもよかったです」

「口で伝えていたこと、手話で伝えていたことをしないと決めたことで、何かを伝えたいと思っている人をみんながじっと観察して、理解しようとする姿勢が自然に生まれていたと思います。相手を見ることの大事さに改めて気づかされました」

技術や振り付けよりも、もっと手前にある「音楽とダンスの土台」を確認することにもなった今回のワークショップ、ナビゲーターの3人は継続的な活動にしていきたいと話していた。

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こんにちは、共生社会とは

障がいの有無、経済環境や家庭環境、国籍、性別など、一人一人の差異を優劣という物差しではなく独自性ととらえ、幾重にも循環していく関係性を生み出すことを目的としたプロジェクトです。2019年に神戸市長田区で劇場を運営するNPO法人DANCE BOXにより始動しました。舞台芸術を軸に、誰もが豊かに暮らし、芸術文化を楽しみ、表現に向かい合うことのできる社会をめざす、多角的な芸術文化創造活動です。

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