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レポート

[テキストアーカイブ③] 新長田で“共生”について考える 現在→これから 第3部:新長田で<高齢者>と共に歩む活動から

2019.07.07

2019年7月7日(日)に開催したキックオフミーティング「新長田で“共生”について考える 現在→これから」のテキスト記録です。こちらでは、第3部の内容を掲載します。

 

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第3部
登壇:首藤義敬(はっぴーの家ろっけん)、大谷紘一郎(株式会社PLAST)、永田智子(新長田あんしんすこやかセンター)、遠藤順二(サービス付き高齢者住宅「やっぱりここ」)
進行:渡辺祥弘(K+action)
 
 


 
 

第3部

 
文: 第3部の進行は、渡辺祥弘さんです。神戸市の職員であり、先ほどご覧いただいたとおり、新長田アートマフィアのメンバーでもあります。よろしくお願いします。
 
渡辺: 神戸市の渡辺です。よろしくお願いします。私はですね、2年くらい前まで、神戸市職員として新長田でまちづくりに4年ほど関わってたんですけど、いまは友達として遊びに来ている関係で、気づいたらアートマフィアに入って、気づけばここで司会してるような感じです(笑)。専門は建築系のことなので、高齢者については正直、わからないので、わからないもの代表として、新長田で取り組んでる人たちがどういう思いで取り組んでいるか、新長田をどう思ってるかみたいな話を深めながら、共生について考えていけたらなと思っています。よろしくお願いします。それでは、私からみなさんを紹介していこうと思いますけども、まず、PLAST(プラスト)の大谷さんです。PLASTは訪問看護から始まって…はじめはじゃないんでしたか?
 
大谷: はじめはデイサービスですね。
 
渡辺: デイサービスから始まって、訪問看護もして、いまはリハビリモンスターをされてたり、ジャングルラボで社員の子どもを預かる保育園をしていたり、秘密基地で障がいのある子どものデイサービスなどを行っているという感じですね。
 
大谷: そうですね、はい。
 

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渡辺: 今日の話の前に事前にひとりずつ話を聞きに行ってきたんですけど、PLASTは設立5年目になるんですかね。5年でこれだけいろんな事業をしていくために、働いてる職員さんが「こういうことをしたい」っていうことと、社会のニーズを組み合わせて事業が進んでいるというのは、すごくいいなぁと思っています。会社の理念としては「想いを叶える、カラダをつくる」ということで、リハビリとかたくさんのメニューがあるんですけど、体のことについて何か知りたいと思ったら、PLASTさんに行っていただけたらと思います。ちょっと写真を見ましょう。これは?
 
大谷: これは新規事業の立ち上げや企画化を会社から提案したときに、手を挙げたスタッフと一緒に形をつくっていく、そのためのミーティングの風景になります。
 
渡辺: 秘密基地をつくるときにも、こういったミーティングから生まれたんですか。
 
大谷: そうですね。秘密基地というのは、障がいを持ったお子様をお預かりするデイサービスなんですけど、それ以前に訪問看護という形で、お子様をリハビリしたり、看護師が訪問するようが事業をやっていましたけど、そのなかで、こういった障がいを持ったお子様を抱えてはる保護者の方がなかなか手が離せないというか、ずっと見ておかなければいけないという思いを強く持ってはる方が多くて、自分のために時間を使うことがなかなかできないという現状が、ニーズとして聞けていたので、私たちに預けている間に自分の時間をとってくださいねということで、秘密基地という名前のデイサービスができました。僕たちはセミナーやミーティングを頻繁に行っていて、スタッフが現場から拾い上げてきたニーズや、スタッフ自身がやりたいことをいかに事業化していくかということを、くりかえし話しあっている感じです。
 
渡辺: 次は、向かっていちばん右側の遠藤さん。こちらはサービス付き高齢者住宅で、2階に診療所、近くには野瀬病院もあるということで、私が見たところでは、安心や安全がすごくきっちりしてはるところやなと思っています。駄菓子屋さんを利用者さんと一緒に運営していたり、先ほど聞いたのは高齢者の方が先生になって書道教室とかも開いているということで、利用者さんが自ら動けるような企画などもされているのかなと思います。まずは、この写真に写るカフェについて教えてもらえますか。
 
遠藤: はい、ありがとうございます。はじめまして。私、医療法人社団十善会の野瀬病院が運営しております、「やっぱりここ」というサ高住があるんですけども、そこの施設長をさせていただいてます、遠藤と申します。よろしくお願いします。「喫茶のりのり」は毎週水曜日に開いてるもので、これが、私どものサ高住、サービス付き高齢者住宅のイベントにご参加いただいた入居者さまに、たとえば、リハビリ体操に来ていただいたり、地域清掃活動に参加いただいたみなさんには喫茶券というのをお渡ししているんです。その喫茶券を持ってきていただくと、珈琲もしくは紅茶を無料で提供させていただく。そこで、みなさまで交流を持って、なかなか高齢者施設というのは交流が難しい施設でもありますので、そういったことをスタッフから発信して、できたらいいかなと思って進めているものです。
 

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渡辺: ありがとうございます。次はその隣り、はっぴーの家の首藤さんです。こちらも同じくサービス付き高齢者住宅ですけど、僕もよくはっぴーの家には遊びに行ってるんですが、まあ正直、よくわからないんです。(会場笑)首藤さんがよく言ってるのは、多世代型介護付きシェアハウスみたいなことで、高齢者の多いシェアハウスやけども、いろんな人が集まる場になっていて、いま、毎週100人以上来てるんですかね?
 
首藤: そうですね、100から300人くらいですかね。
 
渡辺: という地域のリビング的な機能があったり、あとは、困った人の駆け込み寺みたいな面も最近はあるみたいで、まちのセーフティネットみたいな役割も果たしていると。写真もいろいろありすぎて、よくわからないんですけど…これは。
 
首藤: ここ(はっぴーの家)に集まる人たちのワンシーンを撮ったものですけど、全員が他人です。私たちは、「遠くの親戚より近くの他人」というキャッチフレーズでやっていまして。どういう場所かといえば、先ほどの野瀬病院さんがされている安心・安全みたいなことの真逆だと理解いただけたらと思います。でも、そのなかには、たとえば要介護の人やったり、癌のステージ4の人がいたりして、ここで死ねると。そういうよくわからない…僕もよくわからないです(笑)。ちなみに僕、無免許運転です。福祉の資格を持ってないので、今日はちょっとここに立つのが嫌なんですけど、そういう存在です。
 
渡辺: 最近は外国の方、インド人やトーゴ人の方も働いてたりするんですよね。
 
首藤: そうですね。夜になったらみんな勝手にお酒を持って、集まってくるんです。ここに来たらまちの人や、関西の人とつながれるという変な噂が立っていて。(会場笑)インド人も「ちょっとおもしろい場所って言われて来ました。私は仕事がしたいです」って言うから、彼ができることをまちのみんなで探そう! みたいな、そういうリクルートの場所にもなってます。
 

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渡辺: 先週行ってみたら、朝から子どもをおんぶしながら働いてるお母さんも何組かおられて、そういう環境も素敵やなと思いながら見ています。じゃあ、次は真ん中におられる、新長田あんしんすこやかセンターの永田さんです。あんしんすこやかセンターって、僕も何かちょっとわからなかったのですけど、簡単にいえば、65歳以上の高齢者の相談はすべて永田さんのところに持ち込んでいいと。ちょっとしたことから介護のことまで、とりあえず永田さんに言えばつないでもらえるっていうことと、高齢者のコミュニティとかをつくる手伝いもされています。あんしんすこやかセンターというのは、神戸市が中学校区ごとに設置しているみたいで、保健師さん、社会福祉士さん、ケアマネジャーさんとかがいて、どんな相談にも対応できる体制になってるんですね。で、永田さんですけど、「下町芸術祭」の展示をしたり、地域の自治会の旅行とかにも行ってですね、めちゃくちゃ地域に溶け込もうとしている方で、市役所にもこれくらいできる人がいたらもっと変わっていくんかなと思いながら、今日は、永田さんを知ってもらうだけでもいい会かなと思ってるくらいなので、いろんな人がつながって…ベトナムの人でも永田さんと組んでなにかできるきっかけになればと思っています。
 
永田: ほんとによく説明していただいて、ありがとうございます。私も、何の仕事なんかなって思うことも時々あるんですけど、ほんとにいろんな仕事をしています。介護のお手伝いもしますし、自治会のなかったマンションで、「自治会をつくりたいけど、なんぼ呼びかけても興味を持ってもらえないんで、寄り合いみたいな、喫茶会みたいなのを立ち上げたら興味を持ってもらえるんじゃないか」というので、「それを永田さん、手伝ってくれないか」と言われまして、それで自治会をつくることができたりとか。何でも言っていただいたらいろいろ知恵をまわして、みなさんにつなげたりとか、そういうのが仕事かなと思っています。
 

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渡辺: 今回のテーマが「新長田で高齢者とともに歩む活動から」ということなので、まずは登壇している方に新長田はどういうまちか、このまちをどう捉えているかということを聞いていきたいと思います。ちょっとふわっとしてますけど、大谷さんから。
 
大谷: 僕たちが新長田で事業をやろうと思ったきっかけのひとつとして、長田は高齢化率が神戸市のなかでも非常に高いところで、高齢者がたくさんいるんだろうなと。僕は、もともと長田の人ではないので、ほんとにそういうイメージがあって、そこに住んではる高齢者の方が元気にわくわく生活していれば、それだけで、たぶん、まちって元気になるんじゃないかなって。だから、高齢者がたくさんいる長田でやろうかって、事業を立ち上げたところがあります。実際にこのまちに来てみると、ほんとにすごくいろんな、今日来られてる方もそうですけど、いろんな方がいて、僕らが関わらなくても元気にいきいき生活してはるなというのがあって。そのなかで、僕たちに何ができるのか。もともと、リハビリの仕事をしていたのもあって、僕たちは体に特化して、特に年齢のいった方たちがこんなことをやりたいと思ったときに、それができる体づくり、というものを僕たちは提供できるんじゃないかと思って活動しています。
 
渡辺: 永田さんは、いろんな地域の団体さんとか、いろいろ喧嘩しているような姿とかも見てはると思うんですけど、どうでしょう。
 
永田: はい。ちょっと暗い話になるかもしれないですけど、貧困率は高いかなと思います。特に国道2号線より南の方は、ほんとにお金に困ってる方が多いんで、うちも毎日、「お金貸してくれや」って言いにくるおじいちゃんがいます。そういう人たちをどうサービスにつなげていくかってことですけど、私も長田で働く前は、芦屋とか東灘でちょっと働いてたこともあって、お金持ちの方も多いところですけど、長田に来て、ほんとに豊かだなと思うことがいっぱいありました。それは、近所どうしだったり、隣の人が隣の人をちゃんと見守ってたりとか、「電気ついとうか」って毎日見てくれたりとか。お金はないけど、絆が強くて…そういうことがない方も多いですけど、そういったつながりは強いまちだと思います。だけど、これからどんどん孤立の社会になっていくと思うので、そういうことがなくなっていくことを私も危惧していて、でも、首藤さんがされているような活動はそれをまた再構築していくようなことかなと思って、私も学んでいきたいと思ってます。
 
首藤: 新長田のイメージ、ですよね。僕は「下町芸術祭」で小國さんがテーマとして書いていた「境界の民」という言葉がすごく好きで。いま、多文化共生と聞くと、みんなが理解しあって一緒にやるみたいなイメージがありますけど、それはまったく違うと思っていて。自分のなかの理解では、このまちに住んでる人たちはみんな各々、境界線はあるけどもなんとなく折り合いつけながらやってるよね、完全に理解しあわなくてもいいという寛容さがあると思っていて、僕たちがやってる仕事もまさにそうなんです。認知症だったりいろんな事情があるけど、全部を理解しようとするとしんどいけど、なんとなくやっていける。僕らのようなどうしようもない若者だったり、この人たち、他のまちでやっていけるの? っていうような人も受け入れてもらえる土壌があるのが長田のよさで、それが新長田の共生かなって僕は思っています。うちも、表向きはサ高住で、高齢者の家になってますけど、結構、いろんな相談があって、最近ではDVの相談とか。裏の相談窓口みたいになっていて、で、永田さんのところに表の相談窓口があって。僕たちはそれぞれをつないでいくことが、これからもやっていければなぁと思ってます。そんな、いい意味で境界があってもいいよってまちかな。
 
遠藤: 僕の新長田のイメージは、僕の生まれは豊中なんですけど、いまは尼崎に住んでまして、まずは尼崎ともちょっとイメージが似てるなと思っていました。僕が野瀬病院で働いて、いま3年と半年なんですけど、サ高住で働く前は施設管理課というところで、地域の方とふれあいをさせていただいてたら、なにせ、ちょっと商店街を歩けば、いろんなおばあちゃんに声をかけていただいて。みなさん、すごくお節介焼きというか、すごくありがたみがあるなと思います。サ高住は1年半前に建てた施設ですけど、はじめのうちは、なかなか部屋がうまらなくて、ずっと真っ暗やったんです。そしたら地域の方から、「遠藤くんとこ、毎日、部屋真っ暗やけど大丈夫?」って言って、いろんな方に紹介していっていただいて、徐々に部屋が埋まっていきました。みなさん、ほんとに人情味が深いというのか、ありがたみを持っておられる方というイメージがあります。
 

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渡辺: あと10分くらいですかね。じゃあ、もうひとつ、ふたつ聞きたいんですけど、「下町芸術祭」のようなことも含めて、アートによって高齢者との関わりが変わるということがあるのかないのか、地域との関わりみたいなところでの気づきみたいなことがあれば教えてほしいなと思います。
 
大谷: うちの施設は、デザインやアートをできるだけ取り入れる…なんて言うんでしょう、福祉事業や医療とかもそうですけど、杖ひとつ、車椅子ひとつとってみても、デザインがダサいんですね。正直、それしかないからみなさん選んでるところがあって、うちではデイサービスもやってますけど、事業を立ち上げる前にいろんなところの見学に行かせてもらったけど、やっぱりどれもダサいんです。これじゃあ、元気になれないんじゃないかなと。「自分の行ってるサービスって、こんなカッコいいところやから」って言える場所にしないといけないなというのが、僕らの思ってるところで。そういう意味では、アートというものが僕らの事業とすごくマッチすると思っていますし、そういう部分に共感して来てくださる高齢者の方たちも意識は若々しくて…ということはすごく感じます。
 
永田: 私は「下町芸術祭」で小國さんに呼びかけていただいて、展示をお手伝いしたことがあるんですけど、それは私がいつもやってることとは違う世界のことだったので、すごく勉強になったし、楽しかったんです。どうしても私たちって、高齢者の方としか出会うことがないし、しかも、相談窓口なんで、困った方が来ることがほとんどなんですね。だけど、ほんとは元気な高齢者とか、もっと若い世代の人たちともつながっていけたら、もっといろんなことができるのになと思いつつ、そういう機会はなかなかないので、「下町芸術祭」のようなことに私が参加させていただくことで、若い人たちとつながれて。またいろんなことを一緒にやっていけたらなという気持ちは持っています。
 
首藤: そうですね。このまちにはすごく興味の種があるなと思っていて、「多文化共生をやろう」「地域のつながりをつくろう」って言っても、ほとんどの若者や普通の人は参加しないと思うんですね。いわゆる意識の高い人しか。でも、このまちにはすごく選択肢があって、たとえば、アートという文脈があれば、「アートやったら関わるけど」って、本来、携わらない世代の人が交わったりとか、そこに対して寛容性がある…入りやすい遊びみたいなのがたくさん、アートを問わず転がっているのがこのまちのよさかなと思って。それがあるから、こうやって本来つながるはずのない人がたくさんつながって、高齢者や障がいのある人、子どもたちがアートをきっかけに、アートじゃなくてもいいんですけど、不思議な横のつながりができてるのかなと思います。そこがポジティブな相談のキッカケになったりするなというのを最近よく感じます。そういう意味で、アートも重要やなと思います。
 
遠藤: アートについてということですけど、私どもの入居者さまは、だいたい平均で88歳なんですけど、やはり過去にいろんな経験をされてこられてるんです。そこで、アートになるかわかりませんけど、うちでは入居者さんに先生になっていただいて、僕たちがたとえば書道を教えてもらうとか、そういったことを行っています。先日ですけど、僕の家の近くでキングコングの西野さんが「光る絵本と光る満願寺展」というのをされて、ちょっと見に行ってきたんです。若者が多かったんですけど、高齢者の方も多数いらっしゃって。実は、満願寺には階段が結構あるんですけど、車椅子の方も来ていて。やっぱりアートというのは広く高齢者にも興味を持たれているんだなと思いますので、必要なものだと思います。
 
渡辺: 私、役所勤めですけど、新長田は高齢化率が結構高くて、自治会がなくなっているところもあるんです。今後もそういうところが増えていったりして、つながりが希薄になっていくこともありうるのかなと思います。未来の共生を考えていくうえで、正直このままでいいのかなって、僕も漠然とした悩みではあるんですけど…ちょっとまとまってないので、何ともいえないんですけど、どういうことを思いながら未来を考えてはるのかなっていうのをちょっとずつ言ってもらって、もう時間なので終わりにしたいかなと思うんですけども…ふわっとしすぎですかね。
 

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大谷: ふわっとしすぎですね。(会場笑)僕らは高齢者から始まった事業ですけど、いまは保育園を運営してたり、これからまた別の展開を考えてはいて、世代やいろんなもの関係なく関わっていければ。この地域から感じる雰囲気というものはあって、そうですね、僕らもどういう形がよいのか手探りしながら…はっぴーさんみたいな形も、ごちゃまぜの共生という形だろうし、またそれとは別の形もあるかなと思います。僕たちは、正直、まだその形が見つかってなくて、いろんな事業をやっていくなかで、これから会社のなかでは新しいコラボみたいなものが生まれたらいいかなと思いながら、事業を展開しています。
 
永田: 私も孤立や個の社会になっていくのは危惧するところですけど、いろんな人と相対するなかで、人とつながりたくない人って実際はあまりいらっしゃらないんですよ。口ではそう言ってたとしても。だから、そこはやっぱり、あきらめたらあかんなと思うのと、さっき言ってた、お節介みたいなことがいちばん必要かなと思うんですよね。あきらめずにお節介し続けるということ。いままでの自治会とか、土着にあったものはなくなっていくかもしれないけど、みんながあきらめずに人とつながっていこうと思っていければいい。そして、やっぱりリーダーシップが非常に大事になってくるので、今日のような、みんながなくなったら困るという場をいっぱいつくっていくことが大事かなと思います。
 
首藤: 自治会がいいとかわるいとか、そういうことではなく、いろんな価値観がありやすいまちかなと思います。たとえば、在日コリアンのコミュニティ、ベトナム人のコミュニティがあったりして、だけど、うちは地域のコミュニティということはまったく思ってなくて、「遠くの親戚より近くの他人」という価値観に共感する人が来てくれたらいいとしか思ってないです、地域問わず。いろんな方がこのまちに混在していて、「あ、いいよな」って、それでいいんですよ。アートも好きも嫌いもあるなと思っていて、このまちは簡単に「あれ好き」「あれ嫌い」と言えるのがいいまちやなと思う。選べる価値観の選択肢がたくさんあるから、ひとつの媒体だけでコミュニティをつくるんじゃなくて、今後もいろんな価値観の選択肢がこのまちにはいていいよ、ってなれば、いろんなキッカケでつながっていけるかなと思うので。正直、今日登壇してた方の話も僕はぜんぶ理解できてなくて。けど、僕が子どもの頃からこのまちにおってよかったなと思うことがひとつあって、この人何言うてるかわからんけど、こんなこと言いたいんやろなって何となく察する、その力が僕含めて、このまちの子どもたちはすごく高いので…うん、まさに寛容性というか、前半の話になりますけど、そこを大事にしていけば、ちょっと面白くなるんじゃないかなと思ってます。
 
遠藤: 時間もないのでひと言で。共生というのは、みなさん言われてるように、ごちゃごちゃした世界とか、ごちゃまぜということかと思うんです。やはり全体的に、私どもの法人も含めてですけど、地域のいろんなことに協力しあって、高齢者から幼少期の方まで、すべてごちゃごちゃした生活をしていけば、何かヒントが出てくるんじゃないかなと僕は思いますし、たぶん、みなさんもそう思われてるので、そういったところが大事になってくるんじゃないでしょうか。
 
首藤: 渡辺さんはどう考えてるんですか。今日は、置きにいくバッティングみたいなんしてますけど(笑)。ねえ、みなさん、ちょっと逃げてますよね。共生の話を振ってきたけど、行政代表としてどう考えてるのか。
 

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渡辺: 代表はできないですけど、僕も地域に入っていくときに、市役所の人って言われるのは嫌で、渡辺さんとか、なべちゃんって言う関係を築いていく、それが増えていくことが共生なのかなと思っていて。ちょっと話ずれるかもしれないですけど、いろんな組織があって、いろんなコミュニティがあって僕はいいと思ってるんです。そこがさらにつながって、あとは、出ていくのも自由、入るのも自由なのが、この長田のまちの寛容性であり、共生のあり方かなって最近は思ってきて。そのときに、一人ひとりとどうつきあっていくかを大事にできたらいいのかなって。もし市役所がなにか悪いことをしたときに、「おまえも悪いやろ」って言われても、僕は全然知らないって話もあるので、僕個人としてそれぞれの個人とつきあっていけるような関係性がもっと密になって、そんなキッカケをつくれる場所がたくさん増えていけば…僕も私もベトナムの人と仲良くなりたいって思ったときに、そうなれるような場がいっぱいあれば、それは素敵なことなのかなと思っています。
 
首藤: ちゃんとした言葉が返ってきましたね(笑)。でも、この数年で渡辺さんは街の人の感覚が変わって、この前まで神戸市の渡辺さんってみんなに呼ばれてましたから。でも、彼は空き家を再生するコアクションという活動だったり、アートマフィアに関わったり、いろいろ渡辺さんの好きを見つけることによって、誰も神戸市の渡辺さんと呼ぶ人がいなくなった。みんな、なべちゃんとか渡辺さんって。それで居心地がよくなったのかなと思って。
 
渡辺: 友達になったかなという感じです。友達がいっぱい広がっていくことが、共生には早いのかなと思っているので。まあ、そんな感じで第3部は終わりたいと思います。ありがとうございます。
 

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登壇者プロフィール

 
■渡辺祥弘
古い空家をDIYで改修・活用する「コアクション」の一員として活動。長田区久保町にある築100年の長屋を改修し、「芸賭せ」でも活用。日中は、神戸市職員として災害に強いまちづくりに取り組む。「新長田アートマフィア」「まち工場調べたい」の一員としても、長田によく関わっている。仙台出身。大学から神戸に移住。
 
■首藤義敬
株式会社Happy 代表取締役。地域共生型事業のシェアハウス「はっぴーの家ろっけん」を運営。企画段階から保育園児・学生・主婦・クリエイター・外国人など、多様なバックグラウンドをもつ地域住民で事業計画とコンセプト策定を行いながら事業運営をスタート。現在は全国から視察が絶えない地域のセーフティネットとなっている。
 
■大谷紘一郎
株式会社PLAST 常務取締役。2014年に新長田で代表取締役 廣田恭佑とともに株式会社PLASTを設立。リハビリを行うデイサービス、訪問看護ステーション、主に重症心身障害児を対象とした児童発達支援・放課後デイ事業所や企業主導型保育園を設立。PLASTに関わる方の「想いを叶える」を理念に、新長田の南エリアで活動している。
 
■永田智子
1980年生まれ。明石出身。趣味は料理。大正筋商店街の中にある「新長田あんしんすこやかセンター」で地域支え合い推進員として勤務。日々、高齢者福祉に奔走している。
 
■遠藤順二
20歳から16年間、ホテルマンとして勤務。その後、ゴルフ業界へ。41歳から野瀬病院にて勤務。入社時は施設管理課へ配属。長田の皆さまとの交流をメインとしたイベントの担当。2018年2月開設の野瀬サービス付高齢者向け住宅「やっぱりここ」の施設長、現在に至る。兄がココリコ遠藤章造、兄とは違い「クソ真面目」な性格で、面白いことはほとんど言いません『大晦日のガキ使』『踊るさんま御殿』に出演。

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こんにちは、共生社会とは

障がいの有無、経済環境や家庭環境、国籍、性別など、一人一人の差異を優劣という物差しではなく独自性ととらえ、幾重にも循環していく関係性を生み出すことを目的としたプロジェクトです。2019年に神戸市長田区で劇場を運営するNPO法人DANCE BOXにより始動しました。舞台芸術を軸に、誰もが豊かに暮らし、芸術文化を楽しみ、表現に向かい合うことのできる社会をめざす、多角的な芸術文化創造活動です。

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